作 やーすけ・梅太郎
ハードボイルドソーセージ小説 筑豊残侠伝【ちろりん村人間模様】 Ｍボチャン第２章“３”
| Ｍボチャンの第２章 【１】【２】【３】【４】【５】【目次】 |
あの日、我々はＭボチャンの華麗なるドライビングに酔いながら、博多の町へと進撃していた。 ミミスケ（巨大な耳を持つ男）の結婚式に遅参はゆるされない。 一般道には我々の行く手を阻むがごとく、無数の車が溢れていた。 焦るＭボチャン……。 しかし私には秘策があった。 天神までカッ飛ぶ方法――。 それは空中に張り巡らされたエアロード、その名も『都市高速』を飛ぶ。 私はその作戦をＭボチャンに提案した。 だが意外にも、Ｍボチャンのかたくなな拒絶が待っていた。 つづく
――なぜなんだ？ 私の作戦案に、どこか重大な欠陥があるというのか。 私のような凡人にはうかがい知ることができない、Ｍボチャンの世界。 死者の叫びを聞いたのか……。 「都市高速か……フッ」 Ｍボチャンの口元に冷たい笑みが浮かんだ。 「ヨーロッパの地平線に消えるアウトバーンを走るとき、それは二度と帰らぬと決めた男が、故郷を,後にするときなのさ」 そういうと鳶色の眼を眩しそうに細めた。 ――カッコイイ！ カッコよすぎる！ しかしどうゆう意味なんだ、Ｍボチャン。 つづく
この日、Ｍボチャンが操るマシーンには、私の他にもう一人の美しい同乗者がいた。 大きく濡れた瞳を持つ、このスレンダーな女性はＭボチャンのワイフだ。 彼女の唇が静かに動いた。「この人、高速に乗ったことないんよ」 （そうか、そういうことか。意味を聞かなくてよかった） 危うく私はＭボチャンのプライドを、この美しきワイフの前でズタズタにしてしまうところであった。 しかしこのままではミミスケ（耳の大きな男）の結婚式には間に合わないぞー、Ｍボチャン！ つづく