作 やーすけ・梅太郎
ハードボイルドソーセージ小説 筑豊残侠伝【ちろりん村人間模様】 ムクの章”２”
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ムクが親指を鍛えるために行ったトレーニング、それは『ブロック打ち』！！ ブロックをベースの弦に見立て、内側からえぐり込むようにウツベシ！ ウツベシ！ と、まさに血をにじませて、ピシピシブロックを打ち続けたのだ。 その甲斐あって、力一杯弦を叩いても、ちーとも痛くない。だが他の指は、貧弱な指のままだった。 あるとき酒を飲み過ぎたムクが、苦し紛れにリバース（ゲロる）しようとして、思いっきり人差し指を喉に突っ込んだ。 指先は喉ちんこを、わずかに逸れ、喉の秘孔を突いた。 グキッ！ 「痛ッテー」 なんとムクは人差し指を、突き指してしまったのだ。 どうせ鍛えるんだったら、全部すればいいのに……。 だけど、これって音楽の練習？ つづく
こうして鍛え上げた親指を、披露する日が来た。 ブルージーなリードギターを弾く、初代アル酎ブラザースのセイヤ君、現在のある中ブラザースのドラムののちゃん、ムクのベースと、ギター・ボーカルの私の４人で、セッションをやってみようということになったのだ。 ムクはこの日のために、真新しいベースアンプを購入していた。 やる気満々のムクの姿勢に、期待度は最高潮になっていた。 「じゃあ、軽く合わせようか。 セイヤ君が最初に入って、ドラム、ベースの順でいこう」 セイヤ君のチャキの特注ギターが、４拍子のルーズな音を出した。 「いいねえ、さすが特注のチャキ、音が本物バイ。 じゃ、ドラムいこう」 ののちゃんの、スイングを刻む心地いいハイハットが響く。 「く〜、いいバイ、スイングしとるバイ。 よし、ムクいこう」 ついに出番が来たとばかりに、ムクが一歩、足を踏み出した。 つづく
この瞬間のために、つらいトレーニングを続けてきたムクは、あのブロック打ちの苦しさを思い、不覚にも目が潤んだ。 ムクは天に向かって突き上げられた親指を、ベースギターに向かって、「折れよ」とばかりに打ち付けた。 真新しいベースアンプが唸った。 ウィィ――ペッ、ンペッ、ンペッ、ンペッ、ンペッ、ンペッ、ンペッ…。 鍛え上げられた鋼鉄の右親指の連打！ 目にも止まらぬ早さで打ち出されるゴールドフィンガー！ これまで秘められてきたチョッパーが、ついにそのベールを脱いだぁぁぁぁ〜！ 誰も想像だにしなかった最終兵器が炸裂したのだ。 つづく
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